瓜生崇 なぜ人はカルトに惹かれるのか 脱会支援の現場から

カルトから脱会する人と家族をサポートする著者も、かつては熱心な信者だった。入会から組織を登りつめようとしたきっかけとは。脱会のためのコミュニケーション、そしてその後の喪失感まで、関わる人たちへエールを送る。

宗教専門誌が選ぶ2020年の1冊に入っていたので読んでみた。親鸞会の熱心な信者で広報を担当していた著者が赤裸々に語る、自身の経験と脱会者支援の現場。脱会によって寄りどころを失った人々が、支援者に依存する姿が生々しい。アレフオウム真理教の後継団体)を中心に、どうして教祖が神格化されるのか、魔境を経験した自身や小池龍之介のエピソードを交えて語る。何かを支えとする距離感、その重さを考えさせられる。

なぜ人はカルトに惹かれるのか  脱会支援の現場から

なぜ人はカルトに惹かれるのか 脱会支援の現場から

  • 作者:瓜生 崇
  • 発売日: 2020/05/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

宮澤伊織 裏世界ピクニック5 八尺様リバイバル

裏世界で夜を過ごした空魚と鳥子。それぞれ距離感を悩む中、新宿ラブホ女子会が開催される! 内面を写す裏世界の鏡。ただ1軒だけの豪華な洋館。そしてふたたび八尺様を求めてより深く、より遠くへ。

巻を通して高い山に挟まれた穏やかな谷のような印象。でもそれが素晴らしい。裏世界を散策する中、奇妙な洋館に出会う「マヨイガにふたりきり」は、長編マンガの修行編のようなサブエピソードであり、だからこそのコミュニケーションがたまらん。マンガでも物語の“間”が最高なのありますよね。6巻は盛り上がってくれそうで楽しみでしかない。

王谷晶 ババヤガの夜

力だけで生きてきた新道依子は、暴力沙汰から腕力をその筋に買われ、会長の1人娘を紹介された。与えられた任務は学校とお稽古、家だけを往復する彼女を護衛すること。歳の変わらぬお嬢さまが何を考えているのか分からなぬまま過ごす依子だが……。

怒涛の結末に突入した瞬間、読書という快感が絶頂を迎えた。間違いなく今年のベスト。1ページ目からトップスピードで走りだす気持ちよさ。拳が顔面にめり込む快感と、骨を砕いた痺れが伝わってくるようだ。それに、かっこみ飯を美味そうに書く作者は信頼できる。短距離走のようなボリュームがいいんだけど、このテイストでもっと読みてぇ……。

ババヤガの夜

ババヤガの夜