芦沢央 汚れた手をそこで拭かない

夫が犯した過去の誤ちを聞く、余命いくばくかの妻。プールの水を排水してしまい焦る小学校教師。認知症の妻を優しく見守る夫。元不倫相手と再会してしまった料理研究家。一つの言葉、一瞬の迷いがその人を蝕んでいく……。

Twitterで気になる感想を見かけて読んでみた。逃げ惑う弱い人に足を出してこかすような「嫌な物語」で素晴らしい。油断や誤魔化し、または優しさや興味が、悪い流れにさそわれて気がついた時には……。思わず目の前のもので手を拭いてしまうが、また悪循環に。冷や汗を巧みに書くので、他の作品も読んでみたくなった。

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千早茜 透明な夜の香り

市街から少し離れた洋館に、オーダーメイドの香水を作る調香師・小川朔が住んでいた。家事手伝いを任されることになった一香は、奇妙な仲間とともに、朔の身の回りを整えていく。しかし彼には依頼者の体調ばかりか、嘘をも嗅ぎとる力があった……。

第6回渡辺淳一文学賞受賞作。「香水の調香師をテーマにした小説でよかったよ」「こういうのって綺麗ごとばかりですよね」「それがさあ……」という流れで読んでみた。確かに! 豊かな自然描写、濃厚な香りの説明だけではない。少女小説がベースにあって、大人が抱える問題に踏みこんでいく様子がエロ汚い。もっと厳しくてもいいのよ。メディア化受けもよさそうだけど、まずは続編を希望したい。

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森山卓郎 日本語の〈書き〉方

文章をうまく書くためには、文章の基本を勉強しましょう。文字から語彙、組み立てから段落へと、順を追って日本語のしくみを学びましょう。

文章の書き方ってどうして勉強しなかったんだろう。レポートや論文、ネット記事でも、真似と経験で済ませてきたな……。と、文章の基本を学ぶために紹介されていた1冊を読んでみた。売れたいとか、多くの人に読んでほしいという気持ちがないわけではないけど、自分が読み返したときに、もう少しわかりやすい文章を書こうと思ったのでした。

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