アルネ・ダール 時計仕掛けの歪んだ罠

15歳の少女が監禁されているとの通報を頼りに突入するも、現場はもぬけの殻。連続失踪事件として追うベリエルは、上司と衝突しながら説明しきれずにいた。残されたメッセージが、彼に宛てたものだったからだ。現場に必ずいる不審な女性に気づき、一気に駒を進めるチームだったが……。

癖の強い北欧ミステリーを読みたいと思っていたけど、個性派すぎる! 強引すぎるプロットは気になるものの、背景がどんどん変化するので一気に読んでしまった。ラストの「息を呑む」展開が洋ドラなみに強烈。あまりにも苦々しいので、続編を読むかどうか悩む。

続きを読む

吉村文政 戦争の時代の子どもたち 世田国民学校五年智組の学級日誌より

大東亜戦争が進む中、言葉と絵で学級日誌を書いた子どもたちがいた。多くない勉強の機会、農作業で採れた野菜や、先生がかけてくれた言葉。そして疎開してくる同年代の子どもたちや、学徒動員で旅たつ年上の人たち。

8月の終戦記念日に合わせて読んでみた。耐えて制約ばかりの日々、それでも「文化がないなら、自分たちで文化をつくろう」をテーマに、農作業の楽しさを教える校長先生、表現することを支えた女性教員がいた。過酷な環境になっても、こういう人でいられるかと自分に問うてしまった。活動を続け、今日まで残した人たちを心から尊敬する。

続きを読む

青木理 誘蛾灯 二つの連続不審死事件

鳥取の場末のスナック。人気のない店に小柄で肥満、特徴のない容姿のホステスがいた。上田美由紀、35歳。彼女の周りでは少なくとも6人の男がいた。どうして男たちは彼女に騙され、支配され、搾取され、死んでしまったのか。関係者を取材するうちに、見えてきた彼女の姿、寂れゆく鳥取の風景とは。

上田美由紀という存在も奇妙だが、彼女を取りまく人たちの静かな怖さよ。バーのママ、嫉妬深い新しいホステス、泥酔した老客、生き残った男、直接は書かれなかった子どもたち……。事件は終わってもこの町にいる関係者がどうしているのか。読者は想像せざるを得ないだろう。

続きを読む