青木理 誘蛾灯 二つの連続不審死事件

鳥取の場末のスナック。人気のない店に小柄で肥満、特徴のない容姿のホステスがいた。上田美由紀、35歳。彼女の周りでは少なくとも6人の男がいた。どうして男たちは彼女に騙され、支配され、搾取され、死んでしまったのか。関係者を取材するうちに、見えてきた彼女の姿、寂れゆく鳥取の風景とは。

上田美由紀という存在も奇妙だが、彼女を取りまく人たちの静かな怖さよ。バーのママ、嫉妬深い新しいホステス、泥酔した老客、生き残った男、直接は書かれなかった子どもたち……。事件は終わってもこの町にいる関係者がどうしているのか。読者は想像せざるを得ないだろう。