山下柚実 年中行事を五感で味わう

正月のお雑煮に始まり、七草粥、節分、雛祭り……。土地の空気と混ざり合いながら続けられてきた年中行事には、つねに無病息災、子どもたちの成長を願った。そこに存在する音、味、匂いなど五感との結びつきを紹介する。

語り口が優しく、軽い歳事記読みものとして大変優秀。神事、仏事、自然への畏怖と憧れ。1000年以上前の人たちが良心から始めた儀式を今日まで続けている不思議。東京に住む伯父が買ってくるべったら漬けが食べたくなった……(と話したら妻が買ってきてくれた。ありがたい)。

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森博嗣 マインド・クァンチャ

都を目前に、炭焼き小屋で眠っていたゼンは多勢の敵に起こされる。1人の剣士に圧倒的な技量差で敗れてしまうが、谷から落ちたことで姉弟に救われ一命を取り留める。しかしゼンは記憶も刀も失ってしまった……。

そもそも山田章博のイラストいる? 記憶喪失って転生でしょ? といったマイナス面強く読み進めたけど、幕の閉じかたが好きで最後にめちゃくちゃ加点してしまった。 S&Mシリーズ、Vシリーズ、Wシリーズ、そしてヴォイド・シェイパから始まる本シリーズ。どれも最後の1冊が忘れられないほど心を揺さぶるシーンがある。最終巻を読むために森博嗣を手にしている気がしないでもない。

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サイモン・シン 数学者たちの楽園 「ザ・シンプソンズ」を作った天才たち

アメリカの人気長寿アニメ「ザ・シンプソンズ」。ハーバード大学の数学者たちが、シナリオライターとしてドラマや笑いを議論しているとはあまり知られていない。熱狂的ファンである著者が、散りばめられた数学トリビアの楽しさと、そこに隠された意味を解説する異色のノンフィクション。

黒板の残されたたった1行の数式や、積まれた本のタイトル。バックグラウンドで活躍する数学者ライターたちの遊びを、サイモン・シンが数学とシナリオライターの両面から解説する。何度もDVDを見て、オーディオコメンタリーもチェックするほど、僕もザ・シンプソンズのファンで、そんなネタあったなと思いだす嬉しさと、日本への供給が止まっている残念さが入り混じって読み進めてしまった。映画は字幕版が見たくて、六本木ヒルズまで行ったのは特別な思い出だ。皆んなとゲラゲラ笑いながら、最後の1秒まで楽しかった。

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