蟹江憲史 SDGs入門 未来を変えるみんなのために

「だれ1人取り残さない」という理念のSDGsはどうして生まれたのか？ 経済・社会・環境にまたがる17項目を丁寧に解説する。

あまりにも理想すぎるので「だれ1人取り残さない」には素直に賛同できない。しかし、ボトムの底上げが必須なのはわかった。実体験としてもわかっている。結局は苦い薬を飲まないためにはどうすればいいかという話しで、そもそも病気にならないか、苦くない薬を開発するか。同時に薄めてずっと飲み続ける覚悟があるかだ。

SDGs入門未来を変えるみんなのために (岩波ジュニアスタートブックス)

黒木あるじ 怪談売買録 嗤い猿

黒木あるじが地元の大学祭で行った”怪談売買所“。不思議な体験や、奇妙な記憶を語り始める訪問者たち。連作を含む73話を収録。

今年だけで10冊以上実話怪談を読んできた中で、このシリーズは大きな収穫。ちょっとした時間に読めるショートショートとして実話怪談を消化してきたけど、最高のコンセプトに出会ってしまった。断片的なエピソードの寄せ集めに見えて、「私も聞いたわ」「同じ地域だったの？」と連続していく様子が怖すぎる。語り口がコロコロ変わる点は好き嫌いでるかも。色んな筆者で継続してほしい。

怪談売買録　嗤い猿 (竹書房怪談文庫)

アリス・フィーニー 彼と彼女の衝撃の瞬間

ロンドンから車で2時間の距離にある小さな町っで起こった殺人事件。森の中で発見された死体には、マニキュアで“偽善者”と書かれていた。事件を追うのは、メインキャスターから外され故郷に戻ってきたBBC記者のアナと、地元警察の警部ジャック。それぞれの語り口は微妙にずれ始め、お互い疑心暗鬼になり……。

今年は「この結末は予想できない！」に痛い目を合わされたのに、日下三蔵のTweetが気になって読んでしまった。これ以上伏線を足すと危ないッ……！ すでにネタが溢れ漏れてる！  なほど匂わせたまま全速前進で突っ込むのに、傑作スレスレで停止。絶妙なブレーキングに唸ってしまった。たった引き算の妙が冴えるトリックをぜひ読んでほしい。今年のベストかも。

彼と彼女の衝撃の瞬間 (創元推理文庫)