路地の先に見えた、どうしてこんなところに駄菓子屋が……。今までに見たことのない色とりどりのお菓子が、ここ銭天堂には並ぶ。大柄な女性店主が優しく紹介する言葉はとても心地よくて、不思議なお菓子を買ってしまう……。
駄菓子によって老若男女が紡がれるオムニバスで、偶然にも手にしてしまった登場人物たちが、それぞれの人生で幸も不幸も翻弄される。アイテムの使いかたによって成功も失敗もするドラえもんのよう。銭天堂の管理下を超越し、力が1人歩きする脅威「バランスラスク」にドン引き。
続きを読むクイズ王者を決めるテレビ番組「Q-1」。クイズプレーヤー三島玲央は、決勝戦で本庄と並んだ。優勝を決める1問。出題者が読み上げる前に本庄が押した。まさかの0秒解答。真相解明のため、三島は過去の問題を見つめ直すが……。
第13回山田風太郎賞を受賞した「地図と拳」はかなりのボリュームながら一気に読ませる物語だった。本作はスポットライトの眩しさが強烈に記憶に残る傑作。答えを搾りだす思考文体と、主人公の人生をふり返る構成が共鳴し、とんでもない緊張感と臨場感が生まれる。奇抜な謎からしっかり地に足がついた結末まで、 2時間ほどのあっという間の読書体験だった。コミュニケーションツールやSNSを中心に進むので、新鮮さを失わない今こそ読んでほしい。年末のランキングで気になった人はぜひ。
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