松島駿二郎 探険と冒険の物語 世界をどう変えたのか

未知の大地を見てみたい。誰も踏み入ったことのない土地を歩きたい。誰も知らない生物に出会いたい。そんな好奇心、欲望が人を駆りたてる。進化論へと思考を進めたダーウィンやウォレス。新大陸へと進んだコロンブスやマゼラン。南極点を目指したアムンゼンやスコット。彼らの冒険は、物語より惹きつける。

「孫が興味をもってくれれば」という思いで書かれた本書。めちゃくちゃ最高でした。ジョブズには禅の師匠がいたように、津田梅子は家族の理解があって渡米したように、歴史の1行には必ず理由がある。進化論が複数人によって同時期に発案されたのも、クック船長が天体観測の機材を積みこんだのも、歴史が温められたから立ちのぼる湯気なのだ。どうして読んだのかは忘れてしまったけど、面白そうだなと感じた心から、これだけのワクワクが得られる岩波ジュニア新書に感謝です。

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森博嗣 新装版 ダウン・ツ・ヘヴン Down to Heaven

クサナギがエース・パイロットとしてトップの成績を収めた結果、彼女は企業にとっての生きる広告になった。女性キルドレという話題性に利用され、鬱屈とした彼女に、都市部での実戦指令が下る。

森博嗣が書く「熱中する故に格好いい女性」が好きだったんだけど、「恋で視野が狭くなる女性」として読むと、とても悲しい物語だ。男性女性をフラットに書くことで、より差異が浮き彫りになっていたように感じる。今までの作品でもそうだったな。家族が事故にあっていたり、天才すぎたり、孤独を好んだり。森博嗣が書く女性の常として、大きな弱点を負っていませんか?

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文藝春秋編 統一教会 何が問題なのか

安倍元総理の銃撃から再び注目を集める旧統一教会霊感商法合同結婚式・巨額の献金。韓国から始まり、なぜ日本でこれだけ栄えたのか。鈴木エイト氏、宮崎哲弥氏、島田裕已氏らジャーナリストが見てきた統一協会とは。

統一教会がクローズアップされてから、鈴木エイト『自民党統一教会汚染 追跡3000日』、ジャーナリストの自費出版など読んでみた結果、カルト研究が好きなのではなく、なぜ人はカルトに惹かれるのかが好きなのだと気づいた。韓国の現状を追ったルポや、自民党創価学会・旧統一協会の関係を語った座談会は読み応えがある。「旧統一協会自民党に寄せた」という発言は腑に落ちたが、つくづく恐ろしいと感じた。しかし、急かされた出版物という印象は拭えず。全国原理運動被害者父母の会『統一教会(家庭連合)信者の救出 マインドコントロールの実態と救出』が地に足のついた本なので読んでほしい。

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