中山市朗 怪談狩り 山の足音

新耳袋」の著者・中山市朗が蒐集した実話怪談シリーズ第8弾。吉野の山奥で古民家を改修して始まる異常な怪異。明らかな敵意に足が立ちすくむ……。

角川ホラー文庫で唯一読んでいる実話怪談集。「ずれた世界」が典型的なモダンホラーながら圧倒的に怖い。泣ける怪談がいいとは思わないが、大水害で両親を亡くした「泥人形」には思わずほろりとさせられた。

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荒木飛呂彦 北國ばらっど 岸辺露伴は倒れない 短編小説集

杜王町に住む人気漫画家・岸辺露伴が出会う数々の奇怪。至高の音楽を求めた男の末路「黄金のメロディ」。実写ドラマ化の撮影中に始まる怪異「原作者 岸辺露伴」。毎年6月に住人が消える家に呼ばれて……「5LDK ○○つき」の3編を収録。

ジョジョ4部のスピンオフのスピンオフ小説。複数作家によるアンソロジーから、今回は北國ばらっどのみ。今まで以上にジョジョらしさ、岸辺露伴らしさを意識したような3編になっていて、台詞がうるさい印象があった。もっと普通でいいのに。音楽と漫画、それぞれを追求する人間が激突する「黄金のメロディ」は逆輸入してマンガ化してほしい。

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小鍛冶孝志 ルポ脱法マルチ

「近くでいい居酒屋知らない?」その一声についていったらマルチ商法に片足を入れていた。新聞記者である著者が、コロナ禍で彼らに出会い惹かれていく。なぜ彼らはやりがいを求めるのか。通称「事業家集団」「環境」と呼ばれる組織が引きこむ手法とは。

NHKスペシャル取材班「半グレ 反社会勢力の実像」と同じく、記事をそのまままとめて新書にした本だった。お酒の場を通して、彼らがなぜ惹かれていくのかを引き出したり、組織の主要メンバーにコンタクトを取るところまで踏みこんではいる。だけど、印象としては報告書に終わる。強くなった気にさせる時代小説とか異世界転生とかのような、パッと賢くなった気にさせる新書を読んでしまうのやめたい。

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