鈴木棒 実話怪談 花筐

公募実話怪談大会「怪談マンスリーコンテスト」で注目を浴びた現代怪談の聞き手、鈴木棒のデビュー作。集めた奇妙な体験談37話を収録。

自費電子出版をした「エニグマを集めて」がよかったので、デビュー作から読んでみた。廃墟マンションに残された仏壇で見つけた「花瓶の中の世界」、不思議なクラスメイトにまつわる「宇宙人の涙」は目立つ怖さがある。中でも、占いを得意とする男を書いた「本当に大切なこと」が秀逸。導線も不気味だが結末の冷たさが冴えている。

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小野不由美 月の影 影の海 十二国記1

「お捜し申し上げました」。陽子の前に現れた、ケイキと名乗る男は深く跪いた。その先にたどり着いたのは異界の浜辺。故郷へ帰るため、母に会うために陽子は人に騙され、異形の獣に襲われ、旅をして生きる。十二国記シリーズ第1作。

再読するのも20年ぶり。人に認められ律する話しだと記憶していれば、騙され疑われる、騙し疑う物語だった。傷だらけになりながら「わたしは、わたしだ」と宣言する姿が眩しい。学生当時には感じなかった、目がくらむほどの憧れとうらやましさが溢れてきた。教えていただいた皆さま、ありがとう御座いました。

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井上真儀 聖女の毒杯 その可能性はすでに考えた

聖女伝説が伝わる里で行われた伝統的な婚礼儀式。同じ杯を飲み回した出席者から、生者と死者が交互に出る“飛び石殺人”が発生した。これは聖女による奇蹟か、それとも意図した殺人か。探偵・上苙丞による「奇蹟の実在」証明が始まる。

推理合戦が始まると思いきや、否定しなければ死へ直結のデスゲームが展開。バトル展開ともいえる多重推理に終盤まで笑みが絶えなかった。前作も同じく、事件にしろ論証にしろ真相にしろ、よく思いつくものだ。感心しかない。

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