須賀しのぶ 帝冠の恋

”帝国宮廷ただ一人の男の中の男”と呼ばれた女性がいた。その名はゾフィーバイエルン。フランツ大公と結婚した夜、舞踏会で一人の美しい少年と出会う。その名はフランソワ・ボナパルト。彼は飛べない鷹。そして、忌み嫌われるナポレオンの息子。オーストリアと契り、愛はいらないと思っていたはずだったのに・・・・・・。
ああ、なんて素晴らしい恋愛小説。煌びやかな宮廷を舞台にした、須賀しのぶが書き下ろした歴史ものが傑作! 『流血女神伝 喪の女王』に登場した女王バンディーカの恋物語を彷彿とさせる賢女ゾフィーを主人公に、オーストリアから隠され続けたナポレオン2世フランソワ(9歳年下)との愛。あまりにもキラキラした世界に男としては厳しいものがあったが、最後まで一気に読ませる濃さは健在。圧迫された心の叫びを文章にさせると、本当上手い。侍女エステルハーツィ夫人との交流も涙を誘い、彼女の台詞が忘れられない。

帝冠の恋 (コバルト文庫)

帝冠の恋 (コバルト文庫)