ドン・ウィンズロウ ウォータースライドをのぼれ

素人探偵ニール・ケアリーのシリーズ4作目。今までにあった繊細さは消えて、ドタバタとした笑いが絶えない1作。ここにシリーズの幕が閉じられていく悲しみのようなものを、読み込んでしまう。今までの大きな事件で得てきた成長ぶり、素晴らしい恋愛模様を見せてくれた歴代ヒロイン。しかしカレンの魅力も劣らず、彼女にならニールを任せてもいいだろう、という不思議な感情は何だ……? グレアム、エド、そしてキタリッジの感情までが書かれる本作は、読者の今までの気持ちがあふれ返ってくる。複雑に絡み合う利権争いも、読み応えたっぷりと素晴らしい。十分すぎるほど濃厚な杉江松恋の解説も合わせて、大変満足。