大塚英志 木島日記 改訂新装版

戦争の色濃くなる昭和初期……。民俗学者折口信夫は、迷い込んだ古書店で未出版の自著「死者の書」を見つける。なぜここに。そこに書かれた物語は、仮面を付けた店主、木島平八郎による「仕分け」だった……。

続編が出ると聞こえたので再読してしまった。鬱々とした折口信夫の視線で軍人たちが闊歩する東京を書く(酷い説明だ)。刻々と暗闇が増す景色を民俗学からキリスト教、日本神話を交えて、オカルト戦前史に仕上げる面白さ。結末が苦々しい、ロンギヌスの槍南朝天皇家をかけ合わせた「古代研究」が好き。