柳田由紀子 宿無し弘文 スティーブ・ジョブズの禅僧

スティーブ・ジョブズが「生涯の師」と呼び、敬愛した日本人がいた。永平寺からアメリカの布教を目指してやってきた、若き僧侶・乙川弘文。ある人は優れた禅僧と呼び、ある人は酒浸りの女たらしだったと言う。様々な関係者を通して浮かび上げる、弘文の姿とは。

ある人には素晴らしき宗教家。ある人には最低の男。ヒッピー文化が蔓延していたアメリカで、突如現れたプロフェッショナルたちの衝撃が、一人の男を神格化していく。これはグラップラー刃牙だ。夢枕獏が強い男を描くために、回想シーンやインタビューを挟む手法だ。一人のぼんやりとした禅僧を追って、万華鏡のように変化する言葉に読む手が止まらなかった。宗教系新聞の読書欄で紹介されていたので読んでみたが、今年ベストに入る圧倒的な面白さだった。