ク・ビョンモ 破果

人を殺して生きて45年。ベテランの殺し屋・爪角は犬と暮らしながら、日々重ねる老いを感じていた。彼女は守るべきものを作らずに生きてきたが、小さな心の揺らぎが致命的なミスへと繋がる。プロの心情が揺らいだとき、死闘が始まる。

研ぎ澄まされた技術と老いを両立させた表紙が素晴らしい。暗殺シーンで始まるスタートのつかみが上手く、組織でのやりとりも緊張感があって没入感が高い。女性主人公の心境はくどくはないものの、長い一文はけっして読みやすいとはいえなかった。よく言えば、老い疲れた女性の時間軸と終わりへの倦怠感を多分に感じられる。この道に踏みこまざるを得なかった人生と、ふとした瞬間に見せる表情や仕草に強く心を揺さぶられた。