宮部みゆき さよならの儀式

マザー法によって救済された2人の姉妹が実の母に会おうとする「母の法律」。45歳のわたしの前に現れたのは、中学生のワタシ。今の私を見て戸惑うワタシを見ていらだつ「わたしとワタシ」。ロボットの廃棄手続きにやってきた少女と受付のやりとりを書いた表題作など、全8編を収録。

自ら両親を殺した少年Aの正体を探偵に依頼する「聖痕」は過去にも読んでいたが、ひりつくような緊張感が至高の出来。現代社会の描写が上手すぎる。「屍者の帝国」トリビュートの「海神の裔」は、明治日本の小さな漁村に漂着した屍者のトムと村人との交流に痺れた。社会派サスペンス・時代小説で経験値を積んだ著者が書くSFは、評判以上の読み応えがあった。超能力警察小説の傑作「鳩笛草」のような作品をまた読みたい。