小野寺哲也 田野大輔 検証ナチスは「良いこと」もしたのか?

アウトバーン建設や、失業率を低下させた政策、家族手当に福祉厚生など、国内外で議論される「ナチスは良いこともした」という言説。功績とされるエピソードを、ナチズム研究の蓄積からその背景を解説する。

知人が購入していたので読んでみた。ナチスが行った数々の政策の裏には、脱略や差別、虐殺といった絶対的な悪が存在した。国営のために政策者の利を産み、特定の人々に不利益があってはならない。森博嗣が「政治とは不満を薄めることだ」と書いていたが、ナチスの活動は政治とは呼べない、まさに独裁であった。一つひとつの項目がとても納得させられる1冊であった。ツヴァイク『チェスの話』の背景を知る上でも参考になった。しかしながら人単位で考えると怖くもある。今、スキャンダルを起こしたとして「良いこともした」とのフォローは許されないのだろうか。

ナチス善悪論争については以下の書評も参考にされたい。