23年度読んでよかった本

2006年から続けている「今年読んでよかった本」。ストレスがあるなら衝突すれば解決するじゃない? という恐ろしい1年でした。皆んなよくがんばったよ。2024年は少しでも落ち着いてくれれば。この1年での読書記録は85冊以上。ふり返ると印象に残った作品が多い年でした。

今年のベストミステリーはアンソニーホロヴィッツ「ナイフをひねれば」。積み重なった違和感が1つひとつほぐされていく気持ちよさ。地味とは呼ばせたくない、このシンプルさの妙。

M・W・クレイヴン「グレイラットの殺人」は海外ミステリーのドライブ感を楽しませてくれた1作。ポーとティリーのコンビが挑む難事件はますますハードになってきた。じっくり猟奇殺人を追う作品も期待したい。シリーズのクライマックスを迎えるユッシ・エーズラ・オールスン「特捜部Q カールの罪状」もよかったけど。

「ミステリーが好きだと伺って……」とリアルでミステリー・ファンに出会えるとは。情報交換する中で教えてもらった、好きかと聞かれればそうではない井上真偽「その可能性はすでに考えた」。でもめちゃくちゃ嬉しかったです。24年は続編を読んでいきます。

子どもがどんどん漢字を読めるようになり、一緒に小学生向け怪談を読めるようになりました。朝宮運河編「てのひら怪談は小学生向け、実話怪談の第一線の書き手たちも参加する嬉しいシリーズ。3作目「見てはいけない」では子どもの人生初となる叙述トリックに出会っていると思うと震えるほどうらやましい。

今年は実話怪談を20冊近く読んでいて、全読書の20%にあたる。その中でのベストは黒木あるじほか「投稿瞬殺怪談」。プロから野生の語り手までが参加する、瞬殺怪談シリーズ中でもかなり満足感がある。中でも田辺青蛙の呪物ネタが極悪。

岩波ジュニア新書、ちくまプリマー新書ともにいい作品が読めた。

金井一薫「ナイチンゲール よみがえる天才9」は「アレキサンドロス大王」「レオナルド・ダ・ヴィンチ」と並ぶ良作。シリーズの継続を熱く望む。

2023年、信仰とはどういうことかと悩んだ人は多いのではないでしょうか。石川明人『宗教を「信じる」とはどういうことか』に答えが書いてあるわけではないが、信仰に正面から向かい合う姿勢への感動は、解説や批判では起こり得ない。

読書を経験するものを永遠に魅了し、翻弄し続ける源氏物語高木和子「源氏物語入門」は概論を丁寧に教えてくれるいい1冊。センセーショナルに書いたり、言葉を崩したものもわかりやすくはあるけど、年老いた教授の説明を聞くようなものが読みたい。

子どもたちはますます大きく賑やかに、夫婦中もいろいろあるけど楽しく和やかに。仕事を進めながら、たくさんの本が読めますように。