ジョージ・R・R・マーティン 乱鴉の饗宴

マイケル・スレイド新刊でもでたら、確実に満腹以上になって死ねる。1部から再読という超長い前夜祭を経て、<<氷と炎の歌>>第4部『乱鴉の饗宴』を読み終えた……。至福。
第3部『剣嵐の大地』までは、北のスターク制と中部のパラシオン、ラニスター制との一大混乱期が書かれてきた。今回は、中部を掌握したラニスターと、あまり存在を意識させられなかった南端を支配するドーン一族が遂に動きだすか!? どうなる!? みたいな話。彼らの魅力といったら……ハァ……。
シリーズ構成として、次のステージに繋がるエピローグ+プロローグのようなものになっている。第3部があまりにも面白かったので、どうしても物足りなさを感じてしまいがちだが、今回からクローズ・アップされるキャラクタたちの魅力は大きい。いきなり前面に登場するので、極端な書き方をすると、後出しジャンケンにも思える。しかし、神の視点を妄想力でなんとかするしかないのだけれど、<<氷と炎の歌>>では書かれていないけど存在するものが多い。この点は、第2部『王狼たちの戦旗』文庫版5巻で米光一成がピンポイントで解説している。その延長として人だけでなく、伝説にしても、書物にしても、宗派にしても、まるで第4部から思いついた設定のように続々と登場するが、存在していたんだと意識して読むと、また面白い。
だからこそ再読が一番すばらしい。神の視点がどんどん明確になってきて、城壁のひび割れや、積もった雪の美しさまで見えてくるような。例えば、エダード・スタークはマイスター・エ−モンのことを知っていた可能性があるわけで、するとドラマが生まれる。弟ベンジョンのことを思い出すと、息子スノウのことを思うと……。そんなことがそこら中に転がっている。最高でしょ?
訳者が岡部宏之から酒井昭伸になって、この物語を目の前にして読まないという選択肢はなかった。名前や名称の変更に、どうしても今までの愛着は捨てきれないが、これはもう、人それぞれだろう。ただ僕は、夜警団という慎ましさが大好きだった。