阿津川辰海 紅蓮館の殺人

落雷による山火事が発生。山中に隠棲した文豪に会うため、合宿を抜け出した高校生の2人は幸運にも館に救われる。そこに住む少女とも仲良くなった翌朝、釣り天井の部屋で圧死していた。これは事故か殺人か。館全焼までのタイムリミットは35時間。死が迫る極限下で選ぶのは、真相か生存か。

多くの年末ミステリーランキングで話題だったので読んでみた。あらすじは山火事と館をクローズアップしているけど、読み応えとしては2人の探偵が登場すること。1人は嘘を見ぬいてしまう高校生探偵と、その助手役。積み重なった嘘が連鎖的に解かれていく楽しさは、本各ミステリーの醍醐味として十分。もう1人は過去の連続殺人犯を追い詰めたものの、悲劇により引退した元探偵。新人とベテランが対立し、何を真相とするかのぶつかり合いがいい。そこを若々しい作風ととるか、物語が複雑と感じるかは読み手の好み次第だろう。館も因縁も違和感もよく作られた話題作だった。

紅蓮館の殺人 (講談社タイガ)

紅蓮館の殺人 (講談社タイガ)