小野不由美 営繕かるかや怪異譚

叔母が住んでいた町屋には箪笥で隠された奥座敷があった。襖を何度閉めても開いている(奥庭より)。武家屋敷のリフォームをしてから、同居する母は天井の足音にますます悩まされるようになった(屋根裏に誰かいるのよ)。家の困りごとを相談すれば、営繕かるかやが訪れる……。

小野不由美によるハートフル・ホラーと受け取るか、極悪な家の怪異と受け止めるか。実際「残穢」レベルで怖い。なのに物語がとてもやさしい。根本的な解決ではなく、営繕かるかやによって矛を収める姿勢が心地よい。苦悩するシングルマザーと怪談を合体させた「檻の外」が傑作。閉鎖空間である地方都市のコミュニティーと駐車場が舞台になり、予感させる結末が怖い。読書のモチベーションが大きく下がっていた中、ようやく読み通せた作品。思い出しては続きを読みます。