2018-01-01から1年間の記事一覧

原田実 江戸しぐさの正体 教育をむしばむ偽りの伝統

道徳の教科書にも掲載され、広告にも使われた「江戸しぐさ」。実は江戸から続く伝統などではなく、近代に作られたものだった。その歴史と広がった経緯を追う。 全ての伝統はどこかで、誰かによって作られて、関係者の好意によって広まっていくものだ。という…

池上冬樹 週刊文春ミステリーレビュー2011-2016[海外編]名作を探せ!

タイトルまま、週刊文春で連載されたミステリーレビュー集。意外と読み落としていたり、その時は引っかからなかった作品があることに気がつく。『暗殺者グレイマン』など、新しい出会いもあったので満足。この前の年代も出してほしい。国内編も合わせて是非…

今野敏 弧拳伝 新装版 (1)(2)

九龍城でストリートファイトをくり返す孤児、朝丘剛。母を殺したヤクザである父へ復讐するため、剛は日本で同じ世界に入る。闇試合での格闘、見よう見まねの功夫と師匠の出会いを通して、剛は戦いの先に何を見るのか。 本屋で平積みになっていたので読んでみ…

ポール・アルテ 第四の扉

オックスフォード郊外の屋敷で、殺害されたダーンリー夫人の幽霊が屋根裏に出るという。そこに越してきた霊能力があるというラティマー夫妻だったが、ー交霊会をしてから奇妙な事件が続発する。さらには交霊会中に密室殺人が起きてしまう。この不可解な事件…

古橋秀之 百万光年のちょっと先

寝る前に聞かせてくれる、彼女が語る5分間の物語。その舞台は百万光年のちょっと先……。 古橋秀之、9年ぶりの新刊ってマジで? 今までのテイストが随所に散りばめられているので、古橋秀之が好きならもちろん楽しい。ショートSFからの興味で読んでも、もちろ…

中牧弘允 ひろちか先生に学ぶこよみの学校

Webサイト暦生活で連載された人気コラム 「こよみの学校」の書籍化。 国立民族学博物館で購入。タイトルそのままの内容で、暦にちなんだ読みやすいコラムが続きます。太陽暦、太陰太陽暦は分かっていたけど、じゃあ太陰暦って理論だけで実在しないんじゃと思…

森博嗣 ψの悲劇 The Tragedy of ψ

大学を引退してからも自宅で研究を続けていた、八田洋久博士。遺書ともとれる手紙を残し、失踪して一年が経った。博士と縁のある者たちが八田家へ集う中、島田文子と名乗る女性が現れる。書斎に残されたコンピュータから「ψの悲劇」と題された奇妙な小説を発…

藤田祥平 手を伸ばせ、そしてコマンドを入力しろ

母がリビングで首を吊ったとき、僕はゲームに夢中だった。ネットゲームにはまり高校を中退。仕事と欝を乗り越え、大学で創作を学び、星系間戦争ゲームで海外列強企業と対峙した。ゲームと文学に溺れた著者の自伝的青春小説。 帯がとても魅力的だったので読ん…

竹本健治 涙香迷宮

明治の傑物・黒岩涙香が残した四十八首のいろは歌。そこには暗号が隠されているはずと、好事家たちが集まった。専門家たちの中には、IQ208の天才囲碁棋士・牧場智久がいた。 竹本健治を読むのは初めてだわ。しかしこれ、いろは歌の創作は絶品だけど、本格ミ…

田中芳樹 銀河英雄伝説1

銀河系に一大王朝を築きあげた帝国の、若き“常勝の天才”ラインハルト・フォン・ローエングラム。民主主義を掲げる自由惑星同盟の、軍略家“不敗の魔術師”ヤン・ウェンリー。二人の智将の戦場での出会いが、のちに銀河系の命運を大きく揺るがすことになる。 よ…

辻内鏡人 中條献 キング牧師 人種の平等と人間愛を求めて

アメリカ公民権運動の指導者として先頭を歩み、39歳にして銃弾に倒れたキング牧師。当時の人種差別を振り返りながら、アメリカ近代史を解説する。 銃乱射事件でキング牧師の孫が登場したが、彼のことを何も知らなかったので読んでみた。たった50年ほど前はア…

名梁和泉 二階の王

何年も姿を見せず、引きこもったままの30歳の兄に苦悩する家族。「悪因」に感染した「悪果」を倒すために集まった男女6人。彼らだけが感染した人間を、五感を頼りに見分けることができた。急激に感染を広げる「悪因」のどこかに、感染源があるはずだが……。 …

山本豊津 アートは資本主義の行方を予言する

現代アートはわからないと言われる。なのに、どうして現代アートは資本として取引されているのか。東京・銀座で現代アートを取り扱う老舗・東京画廊のオーナーが語る現代芸術史。 面白かったと後輩が貸してくれた。古美術と違い、現代芸術(というか今作られ…

澤村伊智 ぼぎわんが、来る

田原秀樹を訪ねて、奇妙な女が来社したという。対応した後輩社員は、腕に噛み傷のような怪我を負い、原因不明の熱を出して入院してしまった。それは昔、祖父が言っていた「入れてはいけない。答えてはいけない」なにか、”ぼぎわん“なのではないか。田原は家…

岩波書店辞典編集部編 ことばの道草

岩波新書の栞で紹介された言葉の数々。広辞苑改定作業の中で発見された言葉の面白さを、この1冊に。 広辞苑に載っている面白い言葉かと思えばそうではなく、言葉の由来などを掲載する“岩波新書の栞”をまとめたものだった。枕元に置いて少しずつ読める、寝し…

ロジャー・ホッブズ ゴーストマン 時限紙幣

カジノ街のど真ん中で発生した現金輸送車の襲撃。激しい銃撃戦の末、犯人たちは120万ドルを手にした。しかしその現金が48時間後に爆発することを、彼らは知らなかった。大金を巡り、始末屋のプロ、ゴーストマンに事件を阻止するための依頼が入った……。 「週…

眉村卓 妻に捧げた1778話

余命1年。残りの時間を宣言された妻のために、夫である作家は1日1話のショートショートを書くと誓った。最後の1作を書き終えるまでの5年あまり。その中から19編と、思い出をまとめたエッセイ・ノート。 少し不思議なショートショートと、5年間の妻への想いを…

中山市朗 怪談狩り 市朗百物語 赤い顔

怪談蒐集家・中山一朗の第2弾。ちょっとした合間にKindleで読んでいたので内容は忘れてしまったけど、怪談のシリーズはこれでいいと感じる怖さと面白さ。 怪談狩り 市朗百物語 赤い顔 (角川ホラー文庫)作者: 中山市朗出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店発…

アガサ・クリスティー オリエント急行の殺人事件

国際列車オリエント急行は、いつになく混んでいた。名探偵ポワロは偶然乗り合わせた面々と楽しみながら旅を続けるが、大雪で列車は止まってしまう。その晩、大富豪が室内で殺されるが、全ての乗客には確固としたアリバイがあった……。 有名古典で、20年ほど前…

赤野工作 ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム

2115年4月、レトロゲームレビューサイト「ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム」がオープン! 長い歴史の中でも、低評価されたゲームの数々と、それに魅了された星々ほどのプレイヤーたち。尖った試みの先にある世界とは……。 Twitterで話題になっていた…

清水潔 殺人犯はそこにいる 隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件

群馬と栃木の県境、半径10Km以内で5人の少女が誘拐され、数人が殺されて発見された。犯人逮捕となった「足利事件」は、本当に解決に至っているのか? ライターの調査によって、驚きの真相が浮かび上がるドキュメンタリー。 書店員の悲痛な推薦文が話題となっ…

ユッシ・エーズラ・オールスン 特捜部Q 自撮りする女たち

未解決事件を専門に扱う、コペンハーゲン警察の特捜部Q。風当たりの強い中、かなめのローセが体調不良で離脱。別部署は老女撲殺事件に取りかかっているが、未解決の女性教師殺人事件に似ているとの情報がカールに入る。その上、生活保護を受ける女性たちを狙…

阿古真理 「和食」って何?

「和食」というけど、私たちが日常食べているものは「何食」なの? 洋食、中華、多国籍料理とどう違うのか。歴史的な概要から、著者の母の生活をふり返りながら、近代の生活の変化を追う。歴史を勉強をしていると室町時代に文化大爆発が起こっていることに気…

フィル・ナイト SHOE DOG 靴にすべてを。

日本のシューズメーカーの靴を売りたい! オニツカへの情熱だけで駆けだした、アメリカの青年起業家は様々な課題、危機に直面する。それでも陸上競技用シューズを販売するのは、スポーツの世界で活躍する選手たちが見たいからだ。世界のスポーツを変えたNIKE…

ケン・リュウ 紙の動物園

母が折った紙は、まるで生きているかのように動きはじめた。わたしの小さな友達と、家族の葛藤を書いた表題作。閉ざされた一族の縄文字を求めてやってきた農科学者との関係を書いた「結縄」など、7編を収録。ヒューゴー賞・ネビュラ賞・世界幻想文学大賞を受…

アンデシュ・ルースルンド ベリエ・ヘルストレム ボックス21

リトアニア人娼婦のリディアは、売春斡旋業者から激しい暴行を受け病院へと搬送された。意識を取り戻した彼女は、何故か医師を人質に病院に立てこもった。偶然にも同院内で殺人事件を捜査していたグレーンス警部は、現場で指揮を執ることになる。シリーズ1作…

林望 恋の歌、恋の物語 ― 日本古典を読む楽しみ

恋をテーマに『万葉集』『古今集』『伊勢物語』『源氏物語』など、日本の古典の魅力を縦横に解説。僕たちがスマホで写真を撮るように、遠い昔は恋を中心に詠っていたんだ。古典の代表作の切り抜き、それも熱愛を紹介しているので(抜粋でもあるが)とりあえず…

野澤道生 教科書一冊で解ける東大日本史

東京大学入試の日本史は、教科書の知識で解ける・提示された資料に過不足はない・日本史の本質を問う、内容になっている。市民講座で人気となった内容を書籍化。こういう新書って、賢くなったような優越感の刺激が気持ちいいよね。新書はおじさんをダメにす…

今村昌弘 屍人荘の殺人

ペンション紫湛荘で毎年行われる神紅大学映画研究部の夏合宿。ミステリ愛好会の葉村譲と会長の明智恭介に、探偵少女を名乗る剣崎比留子は、脅迫状が届いたとの噂を聞き、人数の穴埋めと興味本位で参加した。合宿初日の夜、肝試しに出かけるが、想像しえなか…

森博嗣 つぼやきのテリーヌ The cream of notes 2

森博嗣がクリアに思考し、クリーンな文章で綴る100の呟きとその補足の第2弾。著者の道筋をたどるような、今までの記述されてきたニュアンスを、なるほどと思いながら読んでしまう。森博嗣が今まで散々書いてきたことの再利用でもあるけど、日記がコラムにな…