ランドル農園の奴隷仲間から孤立した少女コーラ。母は脱走し行方が知れず、主人たちの残虐から逃れるだけで精一杯の日々だった。仲間に誘われ逃亡を決意した彼女は、地下を走る列車に乗って自由な暮らしをできるという土地を目指す……。
消えゆく奴隷たちへのインタビューを下じきにしたノン・フィクションの味わいと、実際にあった奴隷解放運動の地下鉄道、それをスチームパンクに転じた発想がたまらん。奴隷狩りの邪悪さだけでなく、雇う人、隠す人、逃れる人たちのひと1人に潜在している悪の濃さといったら……。黒人奴隷の開放をねがった人々の運動は、ジェームス・M・バーダマン「アメリカ黒人史 奴隷制からBLMまで」とウェルズ恵子「魂をゆさぶる歌に出会う アメリカ黒人文化のルーツへ」が素晴らしいので副読本としてどうぞ。