時海結以 久織ちまき 紫式部日記 天才作家のひみつ

父の影響で博識になった女性、藤式部。夫の急逝により短い結婚生活を終え、物語を書き始めたところ評判となり、宮中で働くことに。噂話が絶えず、人間関係で悩んでも、支えてくれる人、物語を待ってくれる人たちがいた……。

おっとりお仕事小説という新しいジャンル性を感じた紫式部日記を忠実にベースにしながら、上手くキャラクター小説に変換している。分かりやすいキャラクターにしない匙加減が見事。季節の移り変わりやおめでたいイベントの様子が活き活きと書かれ、平安時代の貴族社会が目に浮かぶ。学問が好きで穏やかな日を望みながら、宮中での人間関係に悩み、副業の執筆活動が忙しくなってしまう、そんな主人公にほんの少し憧れてしまった。