2012-01-01から1年間の記事一覧

広瀬正 エロス

芸能界の舞台に立って37年、橘百合子はふと思った。あの時、わたしが歌手としてデビューしていなかったら? もしあの時、違う選択をしていたら、わたしはどんな人生を送ったのだろう。時は昭和8年、震災のあった岩手から東京に出てきた少女みつこは、とある青…

山田風太郎 人間臨終図巻2

自分の死は地球より重い。他人の死は犬の死より軽い(帯より)。50歳から64歳までの死んだ人々を集めた”人間臨終図鑑”その2。色々な死への道、それをたどっていくエピソード数あれど、山田風太郎の書く有吉佐和子が強烈すぎて……。悪意のないところ、もしや悪…

428 〜封鎖された渋谷で〜

双子姉妹の1人が誘拐された。受け渡し場所は渋谷・ハチ公前。張り込む若手刑事、その場にやってきたチームの元ヘッド、突っ走るフリーライター、ティッシュ配りのネコ人形タマ、そして誘拐された少女の父親。彼らの行動、選択、一言が渋谷の未来を変える。 9…

宮部みゆき 理由

東京荒川区の高層マンションで起こった一家殺人事件。監視カメラに写っていた男の犯行に思われたが、あの部屋の住人たちは赤の他人だったことがわかり、事件は急変する。誰が殺し、誰が何を理由に殺されたのか。 宮部みゆきがドキュメンタリ的手法で現代社会…

森博嗣 相田家のグッドバイ

建築家で哲人的な父と、ものを整理収納して一切捨てない母。普通の家庭だったけれど、少しだけ変わっていた家族。その家に生まれ、育ち、両親の死を見た彼が最後にしたことは、供養だったのか。 ファンになった15歳頃に読んでもわからなかっただろう、今30歳…

伊坂幸太郎 モダンタイムス

システム・エンジニア、渡辺拓海の新たな仕事は出会い系サイトの仕様変更だった。簡単に終わるはずだった依頼は、先輩の失踪と、奇妙な外注先によって、不可解さを増していく。謎を追えば、襲いかかる刺客。彼らは何を検索してしまったのか。どうして、その…

木原浩勝 隣之怪 木守り

新耳袋、九十九怪談とは違う、それには掲載できなかった奇妙な話。ショート・ショートから一転、ボリュームのない短編に変わっている。インタビュされる側が語るそのままを文章にしているので、若干読みにくいところもあり、従来のファンからは厳しい声が聞…

コリン・デクスター 謎まで三マイル

川で発見された死体は、首と両手足が切断されていた。被害者不明から始まる事件に、冴えきらないモース主任警部だったが、少しずつ全貌が見えてくる。死体は行方不明の大学教授であり、派閥が事件になったのだ。しかし、その行方知らずだった教授から手紙が…

ジョージ・R・R・マーティン 七王国の玉座 ― 氷と炎の歌 改訂版

300年弱、ターガリエン家による統治がなされてきた七王国は、ロバート・バラシオンが叛旗を翻したことで、一族の滅亡と共に終える。新たに玉座を手にしたロバートにより、微妙なバランスを保ちながら平和と長い夏が続くと思われていた……。 しかし新王朝から1…

セバスチャン・フィツェック アイ・コレクター

ベルリンを襲う連続殺人事件。子供を誘拐し、母親を殺し、決められた制限時間内に父親は子を見つけなければならない。タイムアウトになれば、子供は左目をえぐり取られ、殺される。”アイ・コレクター”を追う元警察官・新聞記者ツォルバッハは、事件の中で容…

真梨幸子 殺人鬼フジコの衝動

一家惨殺事件、唯一の生き残りとなった1人の少女フジコ。いじめ、虐待から解放された彼女は、輝く未来へと歩むはずだった……。いつしか狂い始めた人生。どうして、どうして誰もわかってくれないのか。だからフジコは殺す。バラ色の未来を作るために……。 わー…

ドン・ウィンズロウ 野蛮なやつら

眩しい太陽と、美味い料理。そして極上のマリファナ。カリフォルニアのビーチで大成功を収めたベンとチョン、美しすぎて性的すぎるガールフレンドのオフィーリアたち。メキシコの麻薬カルテルが介入し、南米の流儀をアメリカに持ち込もうとする。拉致された…

貴志祐介 狐火の家

日本推理作家協会賞受賞作『硝子のハンマー』の続編、謎のセキュリティー屋と美人弁護士のペアが謎に挑む。田舎の旧家で女子中学生が殺される表題作や、プロ棋士が殺された密室を書いた「盤端の迷宮」などを収録した中短編集。貴志祐介の書く奇妙な違和感、…

ミステリアス・ショーケース

新生ポケミスで話題になった作家たちの短編集。『卵をめぐる祖父の戦争』(感想)のデイヴィッド・ベニオフは、青年兵を書いた戦争もの。初めてポケミスを読んでから1年以上経ったんだ。あの時の某感想サイトにはあらためて感謝したい。トム・フランクリンと…

ミレニアム2 火と戯れる女

天才女性調査員リスベットに復讐を誓う一人の男がいた。彼はある組織の手を使って、彼女を拉致する計画していた……。一方、ミカエルらは人身売買・売春組織の実態を暴く『ミレニアム』特集号を予定していた。調査で見え隠れする謎の男ザラ。彼らは男を追うう…

森博嗣 四季 春

徐々に世界は少女の力を認め、利用されたいと思い始めていた。これから創造していく未来は、しかし彼女には遅すぎた。透明人間と出会い、そこで起こった簡単な密室殺人事件。四季、6歳。 当時のことを思い出す、甘酸っぱい1冊だ。今では僕の理想とする6歳少…

ミレニアム 1 ドラゴン・タトゥーの女

大事業家を暴露する記事を発表した、月刊誌『ミレニアム』編集長のミカエル。しかし彼は名誉毀損で有罪になってしまう。責任から『ミレニアム』を去る彼だったが、巨大企業グループから妙な依頼がやってきた。40年前に起こったヘンリック一族の娘が失踪した…

フェルディナント・フォン・シーラッハ 罪悪

弁護士の私が出会った様々な事件。少女を暴行した男たち。レンタカーに乗った奇妙なドライバ。暴力をふるう夫からの逃避。何が彼らをそうさせたのか。その結末で、人は許されるのだろうか。 デビュー作『犯罪』(感想)で話題を呼んだフェルディナント・フォ…

ヨハン・テオリン 冬の灯台が語るとき

スウェーデン、エーランド島のウナギ岬に引っ越してきたヨアキムたち4人家族。しかし間もないうちに、死が訪れる。そして屋敷の異変。ささやき、足音、子供と話す影。屋敷の思い出を残してきた納屋。死者が現世に戻ってくるクリスマスの夜、猛吹雪の中を訪れ…

マイケル・カプーゾ 未解決事件 コールド・ケース 死者の声を甦らせる者たち

ある時は捜査から論理的に、ある時は天才アーティストに降り注いだ直感から、ある時は加害者の告白によって……。フィラデルフィアにある、未解決の事件のみを扱う私設探偵団ヴィドック・ソサエティ。世界の捜査官、犯罪心理学者、法医学者たちが集まり、優雅…

宮部みゆき 長い長い殺人

深夜に起こったひき逃げ事件。被害者にかけられた多額の保険金から、刑事たちは妻に不審をもつ。しかし彼女にはアリバイがあった。被害者が通った飲み屋の女、叔母を慕った少年、事件を追う刑事と探偵。この事件の小さな断片を、財布は語る……。 宮部みゆき初…

ピーター・ラヴゼイ 最後の刑事

湖で発見された女性の全裸死体は何も語らず、身元不明、死亡理由不明。バースきっての古い刑事ダイヤモンドは地道な捜査の上で、ようやく失踪事件にたどり着く。しかし見えない犯人像と、強引な捜査からダイヤモンドは窮地に追いやられるが……。 アンソニー賞…

森博嗣 四季 夏

真賀田四季、13歳。人類の中でもっとも神に近い存在と知られた少女は、成長と共にその才能を発揮していた。ある女性との再会、ある男からの誘拐、完成近づく孤島の研究所。変化する環境を巧みにコントロールしながらも、少女はただ1人の男に止められない感情…

綾辻行人 十角館の殺人

奇才の建築家・中村青司が半狂乱の末に自殺した角島。その島に建てられた十角館へ、ミステリ研究会の面々が訪れる。そして起こる連続殺人。奇妙な館と、姿の見えない殺人犯。そこには中村青司の影が……。 知人に貸したついでに僕も旧版を再読してみた。87年刊…

ヴィカス・スワラップ ぼくと1ルピーの神様

ぼくがテレビのクイズ番組で1億ルピーを手にした後、警察がやってきた。孤児で教育を受けていないぼくが、難問に答えられるはずがないと不正の疑いをかけたからだ。ぼくは本当に運がよかっただけなのに。あばら家の隣で父親に殴られた少女、強盗が乗り込んで…

南直哉 語る禅僧

病弱だった幼少期、死への想像が止まらなかった。15歳で知った「諸行無常」。25歳で出家し、永平寺に入山。生きていくこと、死んでいくこと。永平寺での学びと、アメリカでの経験。禅僧は語る。 30歳の誕生日に京都国立博物館で出会った、といえば大げさか。…

ジョン・ハート アイアン・ハウス

孤児院アイアン・ハウスで育った兄弟マイケルとジュリアン。壮絶な虐めからハウスメイトを刺し殺したジュリアンに代わり、マイケルは大雪山から逃走した。そして兄は凄腕の殺し屋に、弟はダーク・ファンタジー作家に。マイケルは、ガールフレンド・エレナの…

須賀しのぶ 流血女神伝 帝国の娘

山村で育った狩猟の少女カリエは、雪嵐の中で男にさらわれる。目覚めた先でカリエは病弱な王子の代わりとして、王位継承への影武者を強いられる。剣の達人で冷徹なエディアルドと共に、少女は少年たちが待つ皇族の世界へ入るが……。コバルト文庫で人気を得た…

山田風太郎 人間臨終図巻1

詳しくは書けませんが、人の死に関わる仕事をしています。他人の不幸で飯を食っているのか? と疑問に思うこともありました。ただ今は、残された方を幸せにする仕事なんだと思っています。しかし人の死は幸か不幸か、こうして山田風太郎が集めた著名人のエピ…

綾辻行人 奇面館の殺人

中村青司が建てた奇面館。仮面で顔を隠した主人・影山逸史によって集められた6人の男たち。仮面を着けて1泊すれば200万円の報酬が得られる。そんな奇妙な会合は問題なく終わるはずだった。翌朝、季節外れの大雪で孤立した館で、主人が無残な死体となって発見…