芦沢央 許されようとは思いません

営業成績を大きく上げたが実は誤発注。自腹を切って隠したつもりが、交通事故に遭遇する「目撃者はいなかった」。孫娘を子役として売り出すため、祖母が厳しく躾ける「ありがとう、ばあば」。田舎社会の狭さを書いた表題作など、切れ味鋭い5編を収録。

あと一歩踏み込んでしまったら。叩いてしまったら。隠してしまったら。日常から針一挿し分、非日常へ突き出してしまう怖さ。子育てと虐待が絡む「姉のように」や、営業マンのごまかしを書いた「目撃者はいなかった」など、当事者になり得る後ろめたさが嫌すぎる。しんどい日差しのような緊張感に疲れると同時に、また読んでしまう魅力がある。