芦沢央 夜の道標

1996年、誰からも尊敬された塾講師が殺された。元教え子が被疑者として挙がるが、2年経った今も足取りはつかめていない。窓際から捜査を続ける刑事たち。バスケットと友情に翻弄される小学生。同級生を保護する女。父親の虐待に苦しむ少年。不安の糸が絡み合い、真実が紡がれる。

短編集『汚れた手をそこで拭かない』『許されようとは思いません』で書かれた切れ味。連作現代怪談『火のないところに煙は』での吸引力が素晴らしかった。葉真中顕の推薦帯もあり、新作長編を手にしてみた。登場人物の日常を感じさせる描写が魅力的で、短編にはなかったドラマに、誰もがキャラクターに引き込まれるだろう。ただ、葉真中顕を彷彿とさせる現代社会派で、カードを裏返すと現れる絵柄に大変驚きがありながら、その普遍性に疑問がある。登場人物を通して形作られる犯人像は魅力的なんだけど……。