2026-01-01から1年間の記事一覧

水野俊平 ハングルの世界 文字から韓国を知る

上司が「韓国は漢字を捨てた」と語り、ずっと疑っていた。文字を創造したことが確実にわかっている世界にも稀な文字「ハングル」の紹介から本書は始まる。もちろん漢字との訣別はあるのだけれども捨てたとは言い難い。ベトナムはアルファベット表記をベース…

黒木あるじ編 怪談四十九夜 地獄蝶

飲んで目覚めた電車で。亡くなった父の葬式までに。子どもが借りてきた本の1ページに。気づいてしまうと、今までの日常には戻れないのかもしれない。 頭痛が襲いかかる「赤骸骨、青骸骨」。夜、子どもだけが耳にする「お祭りの音が聞こえる」など、10名の怪…

寺嶌曜 キツネ狩り

交通事故によって片目を失明。しかしその目が見るのは3年前の出来事。限られた超能力×一家惨殺事件。全く見えてこない犯人像を地道に追う姿や、事件と物語の絡みあいがリーダビリティ高く一気に読める。犯人の動機や特殊性を書かざるを得ないのはわかるけど…

谷端昭夫 1日5分 茶の湯の歴史

子どもと過ごしながらも隙間に読める本をと手にしたはずが、要点がわかりやすくかつ1日2ページがどんどん繋がっていくので一気読み。入門書でもあるので、これから「THE 唐物」が中心だった東山文化や、江戸時代に町民文化を広げていく様子など読んでみたい…

エリーザ・ホーフェン 暗黒の瞬間

奇妙な事件、加害者、被害者に遭遇する弁護士エーファを主人公にしたドイツ・ミステリーが、シーラッハの名とともに紹介されていたので読んでみた。連れ子が死んでしまい罪を擦りつけられる「塩」。11人のうち、1名だけ確実に無罪ななか裁判が進む「強姦」。…

知念実希人 硝子の塔の殺人

著者が「狭義の本格ミステリーは本書だけ」と紹介したので読んでみた。雪深い森に立つガラスの塔。ミステリ・マニアの大富豪が面々を呼び集めた夜、毒殺されてしまう。続いて更なる遺体が……。島田荘司 → 綾辻行人 → に続く新本格館ものへのアンサーを熱く書…

林公代 宇宙にヒトは住めるのか

宇宙空間で生活をする。月に住む。火星にたどり着くために考え得る衣食住、人の健康とは。いつかは宇宙に行ってみたい。宇宙での生活はどんどん良くなるだろうと、本書を読めばわかる。それでも今、宇宙飛行士が何を食べ、どんな生活をするのか体験してみた…

上谷沙弥 アイドルで落ちこぼれだった私がプロレス界のセンターに立った話

新聞の読書欄で紹介されていたので読んでみた。アイドルを目指すも芽が出ず、テレビ企画からプロレス界に入門。同期がいなくなっても見つけた居場所で咲き、まさかのヒールレスラーに転向。スポットライトを浴びたい! その気持ちを原動力に、彼女自身を輝か…

逸木裕 祝祭の子

宗教団体のコミューンの奥で、特別な教育を受けた子どもたちがいた。組織解体後に隠れた生活を余儀なくされた彼らに、謎の襲撃者が襲いかかる。連作短編ミステリーが年間ベスト級によかったので読んでみた。 人民寺院×殺せんせー×ジェイソン・ボーンで一気読…

白石あづさ 逃げ続けたら世界一周していました

思想が違っても、信仰が違っても、刑務所に入っても……。日常から逃げ出して世界を旅すれば、“常識”に意味はなかったと気づかされる。私の価値観を広げてくれたのは、祖父との食事や旅行だった……。世界を旅しよう! な前向きなルポだけでなく、どうして旅にで…

那須正幹 前川かずお とびだせズッコケ事件記者

ハチベエ・ハカセ・モーちゃんの3人組による痛快劇第7弾。学級新聞を作成するため事件記者になった3人。それぞれの班のために街へと飛び出すが……。喫茶店に入ったり、工場へ聞き込みをしたり、大人との接点が多い物語だ。全然怯まず対等に話しをする姿や、…

野宮有 殺し屋の営業術

第71回江戸川乱歩賞受賞作。敏腕営業マン・鳥井が殺し屋の現場に出くわしたことから、営業力ゼロの彼らをサポートすることに。違う意味で狂った最強スペック・営業マシーンが参加する、殺し屋家業を巡るコンゲームもの。個性豊かな面々が揃っていく少年ジャ…

上坂あゆ美 岡本真帆 歌集副読本『老人ホームで死ぬほどモテたい』と『水上バス浅草行き』を読む

2022年に刊行された2冊の歌集、『老人ホームで死ぬほどモテたい』と『水上バス浅草行き』の副読本。それぞれの歌集を読んで評する。歌の流れや環境を説明してもらうことで、ぼんやりと読んでいた歌集の解像度が上がっていく。プライベートな交流も交えて紹…

那須正幹 前川かずお ズッコケ時間漂流記

ハチベエ・ハカセ・モーちゃんの3人組による痛快劇第6弾。時代劇のロケにでも参加するのかと思いきや、本当に江戸時代にタイムスリップしてミーツ平賀源内。なんでもありと呆れてしまう作風ではあるけど、子どもの感想を聞いてみたい。ほんのりと切なさが残…

ジェラルディン・ブルックス 古書の来歴

ユダヤ教で使われる書「サラエボ・ハガダー」。紛争で行方不明になっていた書が見つかり、古書鑑定家のハンナがサラエボに向かった。羊皮紙に残された蝶の羽の破片。ワインの染み。動物の毛。1つひとつから500年に及ぶ人々の姿が浮かび上がる……。 我が身を捧…

那須正幹 前川かずお ズッコケ心霊学入門

ハチベエ・ハカセ・モーちゃんの3人組による痛快劇第5弾。心霊写真を撮りたいハチベエは弟分の浩介を連れて噂の幽霊屋敷へ。そこではポルターガイスト現象が起きて、オカルト雑誌から科学者までを巻き込むことに。冒険・推理を経て子どもたちが答えを出す姿…

乙一 さよならに反する現象

ここ(ブログ)に記録もないし未読だと思ったら再読だった……(記録し忘れていた)。X発表の超短編を含む書き下ろし4篇が収録されているのでよしとする。今の家族像を書くことで山月記を彷彿とさせる「そしてクマになる」。幽霊がでる家に住み込みながら、お…

フェルディナント・フォン・シーラッハ 犯罪

犯罪×ドキュメンタリー×フィクションの味わいを求めて再読。どうしてそうなってしまったの? を問い続ける。耐え続けた末に愛妻を殺めた医師。強盗の末、たどり着いたエチオピアの村を豊かにした犯罪者。不良の暴力に正当防衛で返した身元不明の男性。モキュ…

斉藤国治 星の古記録

Xで復刊が話題になっていたので読んでみた。日中韓だけでなく、世界の古文書には日食・流星・隕石などの天文記録が残されている。著者はその記録を計算で一つずつ確かめていく。日食や月の満ち欠けだけかと思いきや、数多の星が見えた消えたと細かく記録して…

千早茜 しろがねの葉

戦国末期の石見銀山を舞台に、山師に拾われた少女ウメの生き様を描く。お腹いっぱいで読み終えたあと、北方謙三の後書きで激しく痺れる。格好いい。人の力がいかに小さく、自然と運命の巨大さに、読者まで飲まれていくようだった。 しろがねの葉(新潮文庫)…

岸政彦 断片的なものの社会学

読んでほしいと紹介されたページが、フェルディナント・フォン・シーラッハの短編に似ていて思わず絶頂。1人の人生をなぞりながら、本人にしかわかりえない行動を記録する。ここ数年、シーラッハの新刊では満たされない、乾ききっていた肌が急速に潤されて、…

荒木飛呂彦 荒木飛呂彦の漫画術

『ジョジョの奇妙な冒険』の作者、荒木飛呂彦が創作術を明かす。主人公を軸に物語が常に昇り続けること。全てのコマ・セリフが導線になっていることを、丁寧に説明する。この手法を理解してからジョジョランズを読むと、新鮮さが増して読み応えが増す。荒木…

原浩 火喰鳥を、喰う

2026年はホラー小説からスタート。戦地で死んだ大伯父の日記が届いたことから怪異が頻発するアイテム系ホラー。わかりやすいスタートダッシュから怪異とのコンゲームに転じ、終盤にかけて絶望感が増していく。人形とか日記とかのガジェット系より、家系が好…

25年度読んでよかった本

2006年から続いている「今年読んでよかった本」。とにかく大変な1年でした。一人ひとりに助けてもらいながら、年末と新年を迎えられました。25年に記録した読書は77冊。80冊は超えておきたかった。 24年読んでよかった本でも紹介した、角川ホラー文庫30周年…

乙一 荒木飛呂彦 野良犬イギー

マンハッタン島に潜む一匹の野良犬を捕獲するために、エジプトからモハメド・アヴドゥルがやってきた……。3部開始前、イギーとの出会いを書いた中編と、マンハッタンを舞台にした「ボストンテリアと下水道のワニ」を収録。主人公の巨大ワニvs.イギー戦がペッ…

梓崎優 狼少年ABC

『叫びと祈り』以来の短編集でまさに待望の1冊。映画好きの少年の不審死を書いた「重力と飛翔」は、雪に残された足跡もの。青春×トリックのかけ合わせがレベル高くまとまり、忘れられない1作になった。評価を聞いていた「スプリング・ハズ・カム」、言葉を放…

フリーダ・マクファデン ハウスメイド

仮釈放からギリギリの車中生活をしているミリーがたどり着いたハウスメイドの仕事。でもこの一家、なにかがおかしい⁉︎ 1部・2部で物語が大きく変わるケースで、奇妙な家庭環境はサスペンスフルに、刑務所に戻りたくない主人公の必死さが可笑しい。一気に読め…

上村裕香 救われてんじゃねえよ

難病の母を介護しながら学校に通うも、飲んだくれの父は助けてくれず、皆んなとの時間に差が開いていく17歳の沙智。闇属性の「成瀬は天下を取りにいく」を読んでいるようで、誰一人応援できない。共感もできない。登場人物の多くは夢を見れない。未来を想像…