原浩 火喰鳥を、喰う

2026年はホラー小説からスタート。戦地で死んだ大伯父の日記が届いたことから怪異が頻発するアイテム系ホラー。わかりやすいスタートダッシュから怪異とのコンゲームに転じ、終盤にかけて絶望感が増していく。人形とか日記とかのガジェット系より、家系が好きと気づく。

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25年度読んでよかった本

2006年から続いている「今年読んでよかった本」。とにかく大変な1年でした。一人ひとりに助けてもらいながら、年末と新年を迎えられました。25年に記録した読書は77冊。80冊は超えておきたかった。

24年読んでよかった本でも紹介した、角川ホラー文庫30周年記念のアンソロジー。その3冊目「慄く 最恐の書き下ろしアンソロジーは、北沢陶「お家さん」に圧倒された。大阪の道修町、薬問屋の丁稚を主人公に職住一体の怖さを書く。別格の緊張感と恐怖の演出が相まった傑作。

アンソニーホロヴィッツ「死はすぐそばに」はロンドン中心地の高級集合住宅に、カントリーサイド・ミステリーを構築する。本格ミステリーの苦味と、ホーソーン&ホロヴィッツ・シリーズの面白さが絶妙にマッチしている。

どうして手にしたのかは忘れてしまったが、シリーズ完結しているなら読んでおくべしと、夢枕獏東天の獅子 第一巻 天の巻・嘉納流柔術は最高の読書体験だった。とにかく至福。年に1度、こんな読書経験をできたことに感謝を。天才・嘉納治五郎たちと変わらざるを得ない格闘家たちの生き様を書く。天の巻全4巻で完結であり、地の巻なきままの未完でもある。

ノンフィクションから2冊。

シベリア抑留を経験者の詩人を通して知る、畑谷史代「シベリア抑留とは何だったのか 詩人・石原吉郎のみちのり」。1人の人生を大きく歪め、終わったとしても当事者の心と記憶では終わらない戦争を、今の私たちに問いかける。30年以上前、ベッドでくつろぎテレビを見る祖父に「どんな戦争だった?」と私が聞くと、「焼け野原になった」と一言あったのみ。今になって、なんて残酷なことをしたのだろうと気づく。謝りたい。

藏本龍介『仏教を「経営」する 実験寺院のフィールドワーク』は、現代仏教の実践であり、同時に2500年に渡って連綿と続く伝統仏教の姿を紹介する。著者のフィールドワークを通して、仏教を実践する数々のエピソードに痺れっぱなしだった。貧しい人に手を差し伸べる心が善行ではないと教えられる。

この1年も大変そうだけど、いい読書の年にしていきます……。

乙一 荒木飛呂彦 野良犬イギー

マンハッタン島に潜む一匹の野良犬を捕獲するために、エジプトからモハメド・アヴドゥルがやってきた……。3部開始前、イギーとの出会いを書いた中編と、マンハッタンを舞台にした「ボストンテリアと下水道のワニ」を収録。主人公の巨大ワニvs.イギー戦がペットショップ戦に並ぶほどのベストバウト。パワー×頭脳を持つ静かな敵の造形は、4部のオリジナル小説「The Book」の実績を裏切らない。いつかは原作・乙一荒木飛呂彦に書いてもらいたい。2025年を終える素晴らしい1冊になった。

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