小川一水 天冥の標9 ヒトであるヒトとないヒトと

セレス地表にあるシェパード号を目指す一行が目にしたのは、メニー・メニー・シープの成り立ちを知る道でもあった。セレス・シティ復興を望む人々の思いは、共生への道程となるのか。ヒト、救世群、恋人たち、カルミアン、生きとし生けるものたちの運命が交錯する。

震災による巨大津波のニュースを見ているような物語だ。人の悲鳴、家がひしゃげる音、濁流の色、ニュースキャスターの警告、刻々と増加する死者のテロップ。それぞれの言葉や行動に意味があることに気づく。しかし、読者は何もできないまま物語を見つめるしかない。シリーズ第9巻にして、凄まじい旅に付き合ってきたことに気づく。