2023-01-01から1年間の記事一覧

朝宮運河編 てのひら怪談 ずっとトモダチ

たった3ページでもこわ〜いお話し50編を、ホラー・児童書の人気作家10名の手で収録。 小学生向けの怪談・ホラー本の多さは知っていたけど、実話怪談の実力作家たちの作品が読めるとは。しかもシリーズ3作目まで出ているという……。読者と同年代の子どもを主人…

染井為人 震える天秤

軽トラックに乗った高齢者がコンビニに突っ込み、店員が死んだ。加害者は認知症との疑いに、ライターの俊藤律が取材を進める。関係者を繋げていく中、俊藤は奇妙な風習の残る村・埜ヶ谷村にたどり着く。 夏の文庫フェアから読んでみた。年に2、3冊、ミステリ…

シュテファン・ツヴァイク ツヴァイク短篇選 チェスの話

盲目になったコレクターが美術商に一品を見せようとする「目に見えないコレクション」。カフェの一角で本を読み続ける男を書いた「書痴メンデル」。客船で出会ったチェスのプロプレイヤーに同乗した客たちが勝負を挑む「チェスの話」ともう1編を収録。 シュ…

阿佐田哲也 麻雀放浪記 2 風雲篇

麻雀の世界に入り浸り、ヒロポン中毒にまで落ちぶれた坊や哲。ふらつく手のいかさまを見破られ、逃げた大阪でブウ麻雀にのめり込む。京都の博打寺では大きな集まりが予定されているが……。 1巻は成長が見られたものの、2巻では博打に落ちるばかり。これをピカ…

ホリー・ジャクソン 卒業生には向かない真実

2つの事件に直面し大きなトラウマを負った高校生探偵ピップ。大学入学を目前とした彼女に、いくつもの不可解な出来事が起こる。無言電話に匿名のメール。首を切られたハトと、首のない棒人間の落書き。これは6年前に解決した連続殺人事件の模倣なのか? 服役…

怪談最恐戦実行委員会 怪談最恐戦2022

賞金100万円。五代目怪談最恐位を決めるコンテスト「怪談最恐戦」。様々なジャンルから参加した怪談の語り手の記録。 年10冊ほど実話怪談を読んでいると好みが偏っていくため、開拓のために手を伸ばした。バンドマンの逸話「知りたい? 知りたい?」や、恋愛…

井上真偽 その可能性はすでに考えた

山村で起きたカルト教団による集団斬首自殺事件。唯一生き残った少女は、首を切られた少年に運ばれた記憶があった。その証言と残された忌録から、奇跡は起こったと全ての可能性は否定できるのか? 知人から紹介されて半信半疑で読んでみた(大変失礼な話しで…

金井一薫 ナイチンゲール よみがえる天才9

クリミア戦争に参加した際、不潔な病院を目の当たりにし、清潔と栄養を提供したフローレンス・ナイチンゲール。彼女は統計学を駆使し、感染予防策を訴え、近代看護医療の基礎を築いた。看護師の教育と地位向上に尽力した彼女の生涯とは。 ちくまプリマー新書…

平山夢明ほか 瞬殺怪談 呪飢

平山夢明や黒木あるじ、我妻俊樹など実話怪談の名手による150話を収録。 現代怪談アンソロジーの傑作シリーズ第10弾。ここから現代怪談に触れるもよし、新しい作家に出会うもよし。トイレで聞こえる「足音」。高校の文化祭でお化け屋敷に力を入れた「リアル…

嵯峨景子 少女小説を知るための100冊

100年以上の歴史をもつ少女小説を歴史順にたどり、100の名作を紹介する入門ガイドブック。 氷室冴子や須賀しのぶを読んでいたときに、もう1作「きみが好きそうだよ」と紹介されたシリーズが思い出せない……。NHKが氷室冴子の特集を見て、積んでいる作品を定期…

宮部みゆき さよならの儀式

マザー法によって救済された2人の姉妹が実の母に会おうとする「母の法律」。45歳のわたしの前に現れたのは、中学生のワタシ。今の私を見て戸惑うワタシを見ていらだつ「わたしとワタシ」。ロボットの廃棄手続きにやってきた少女と受付のやりとりを書いた表題…

杉井光 世界でいちばん透きとおった物語

大御所ミステリ作家・宮内彰吾が死亡した。妻帯者の宮内と関係を結んだ母は、僕を産んで1人で育ててくれた。だから僕には何も残されていない。しかし宮内の遺族は、死ぬ間際に書いていた「世界でいちばん好きとおった物語」の在りかを尋ねてきた。存在しない…

千早茜 赤い月の香り

天才調香師・小川朔に誘われて、丘の上の洋館で働くことになった朝倉満。人並外れた嗅覚を持ちながら、そのために世間から離れた彼が作るオーダーメイドの香水は誰もを魅了する。朔と香りに集まる人々を通して、満はある出来事を思い出す……。 天才調香師と家…

ユッシ・エーズラ・オールスン 特捜部Q カールの罪状

1人の女性が60歳の誕生日を迎えて自殺した。殺人捜査課課長ヤコプスンは、彼女が爆発事故で不幸にも子どもを亡くした母親だったと気づく。新型コロナウィルス感染症が蔓延し、クリスマスを迎えようとするなか、特捜部Qは新たに気づいた共通事項を追って再捜…

池上彰 知らないと恥をかく世界の大問題14 大衝突の時代 加速する分断

池上彰が解説する世界情勢総まとめ。ウクライナ戦争の終わりが見えず、情報戦によって世界の分断はますます進む。新型コロナウィルス感染症のあと、私たちのコンパスの針が向く先とは。 新聞を読むための副読本として大変優秀な1冊。過去を振りかえる意味で…

阿佐田哲也 麻雀放浪記 1 青春篇

終戦直後の東京。焼け野原の上野に建った荒屋ではチンチロリンが営まれていた。博打の才を伸ばす「坊や哲」は、ドサ健や出目徳と呼ばれる勝負師に出会い成長していく。生きねばならない時代に、人を踏んでも博打に賭けた男たちのピカレスクロマン。 20年ぶり…

廣嶋玲子 ふしぎ駄菓子屋 銭天堂 7

紅子と怪童による菓子勝負が始まる! 「特別セール」で販売される銭天堂とたたりめ堂のお菓子。喜んで口にしたお客が迎える結末は……。 駄菓子によって紡がれるオムニバスで、偶然にも手にしてしまった老若男女が、それぞれの人生で幸も不幸も翻弄される。ア…

あさのあつこ 10代の本棚 こんな本に出会いたい

10代だったあのころ。本に出会い、心を揺さぶられてきた少年少女。大人になった今、あの日々をふり返ってつづる言葉とは。あさのあつこをはじめ、様々な現場で活躍する著名人が「私と本の物語」を紹介する。 それぞれの著者の読書体験と思い出話しを通して本…

渡辺保 人物叢書 源義経

ドラマや演劇、小説などに登場すれば人気を得る源義経。伝説を含めて多くの逸話を残した青年の本当の姿とは。現存する史料から義経の一生をつづり、鎌倉初期の活躍を浮かび上がらせる。 記録を淡々と並べた義経解説本であり、横道に逸れない真っすぐな1冊。…

森博嗣 新装版 スカイ・イクリプス Sky Eclipse

整備士のササクラはエンジンを調整し、情報部のカイは墜落事故のために会見を準備する。仕事と立場とそれぞれの思いをつづる、シリーズ最初で最後の短編集。 シリーズを通して清涼院流水の巻末著者インタビュー付きの新装版(S&Mシリーズもぜひ!)。杉江松…

黒木あるじ 黒木魔奇録 魔女島

帰宅したばかりの暗い玄関先で。営業先へ急いで向かったあの道。旅先の電車で拾った落とし物。不意に声をかけられて振りむいた先に。あの時の出来事は、誰かに語れば断ち切れるのか。 解体現場の天井絵に魅了される「天女」、授業で見たモナリザは違ったので…

千羽黒乃 麻雀1年目の教科書

麻雀でまず覚えるべきはリーチです。数多くの技(役)もありますが基本を押さえ、少しずつ手数を増やしていきましょう。攻撃と守りのポイントを理解すれば、十分に戦えます。 20年ぶりに麻雀をすることになり、曖昧な記憶のまま打っていたら大負け。基本がわ…

済東鉄腸 千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話

タイトルまま、ルーマニア文学史に名前を刻まれる物語エッセイ。 ルーマニア映画に魅了された勢いでFacebookの友だち申請を出して、ルーマニア人たちとの交流が始まる。そしてルーマニアに関わる人たちとの出会いに繋がっていく。始終淡々と実況を、時に熱く…

トム・ミード 死と奇術師

1936年のロンドン。心理学者のリーズ博士が密室状態の書斎で殺害された。殺される直前に訪問した男。消えた凶器。熱心に通った3人の患者に注目が集まる中、予断なく第2の殺人事件が起こる。元奇術師の探偵ジョセフ・スペクターが不可能犯罪に挑む。 ポケミス…

須藤古都離 ゴリラ裁判の日

カメルーンで生まれたニシローランドゴリラのローズは、母の影響で手話を理解した。そして人に匹敵する知能で会話をするほど成長した。ジャングルの厳しさを痛感し、ローズは夢見たアメリカへの切符を運よく手に入れ、動物園での暮らしは順風満帆のはずだっ…

森博嗣 新装版 クレィドゥ・ザ・スカイ Cradle the Sky

墜落によって負傷し記憶をなくした僕は、彼女のところへ向かう。僕はもう空へ戻れないのか。彼女と平穏な暮らしを過ごすべきなのか。いつかすべてを思い出したときに、空を飛べたなら……。 シリーズを通して清涼院流水の巻末著者インタビュー付きの新装版(S&…

森博嗣 新装版 フラッタ・リンツ・ライフ Flutter into Life

優れたパイロットであるクサナギ大尉や仲間と戦闘機に乗るクリタ。地上ほどうんざりする場所はないが、空は自由に開放してくれる。クサナギを知る科学者や新聞記者との出会いで、クリタの今いる世界が一転しようとしていた。 シリーズを通して清涼院流水の巻…

石川明人 宗教を「信じる」とはどういうことか

科学を誰もが学ぶ時代に、神を信じることはできるのだろうか。全知全能の神がいるのに、どうして悪や苦痛が存在するのか。誰もが抱く疑問を、歴史を通して解説する。 信仰を利用する人もいれば、それで救われる人もいる。信仰は善と言いきれるのか。なぜ悪に…

久田樹生 「超」怖い話 怪仏

怪異との遭遇は事故にあうようなものなのかもしれない。突然、防ぎようのない恐怖に出会ったあと、人はどのような言葉で語るのか。取材による実話怪談を収録。 仏像彫刻教室で教わる「決まり事」。優秀な先輩から引き継いだ営業先の家庭にまつわる「なく」。…

若竹七海 ぼくのミステリな日常

月刊社内報の編集長に抜擢されたため、若竹七海のOL人生は一変。社内の声だけでなく、大学時代の先輩に泣きついて匿名作家の短編を掲載することになった。全12回に渡る謎が読者を魅了する。 佳多山大地「新本格ミステリを識るための100冊」をきっかけに読ん…