白井智之 名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件

楽園ジョーデンタウンでは病気も怪我も存在しない。カルト教団の本拠地に調査に入った助手が帰ってこないため、探偵・大塒は記者とともに飛びこんだ。助手との再会を合図のように、楽園で不審死が発生する。密室・毒殺・切断死体。正しいのは教祖の奇蹟か、それとも探偵の推理か。

白井智之を読むのはデビュー作以来。イロモノミステリーの印象が強く避けていたものの、今作はTwitterの評判がよくて読んでしまった。78年ガイアナで起こった人民寺院集団自殺事件をモデルに、特殊環境下で信者の信仰と探偵の推理が激突する。連続する多重解決は、底からタレが浮かびあがるラーメンのよう。突飛なネタだと感じたものの、作中の熱気に飲み込まされた。多重解決が注目されるのはもちろん、モデルとなった事件そのままミステリーに転換したセンスには恐怖さえ感じる。バランスがいい、綺麗だとは思わないけど、エネルギーのある作品が読めたのは嬉しい。